昼飯時にボスから日本の研究所の経済事情について聞かれた。そういう質問を受けた場合にはたとえ予算獲得状況に関して問題がないとしても金がなくて大変だと答えるべきと学生時代に指導教官から教わっていたので即座にそう答えておいた。大学で教わったことの中で最も役に立っていることの一つである。私がそう答えると、次々に研究環境に関する不幸自慢が始まった。イタリアは自分が以前所属していた研究所が政府によって「役に立たない研究所」に決められてしまい解体されることになってしまったという。EUにおいてはドイツというしっかりした国があるので、イタリアは独立国家としての道を諦め、EUの一地域に甘んじる道を選んだと思われる。スイスから今月移ってきた研究者は任期付きの職員であったが研究所の所長が科学者でなく(クソッタレ)弁護士になってポジションが維持されなくなってしまったことが米国に移住する一つの大きな理由であったという。もう一つの理由は、スイスはEUには含まれないがスイスの研究所は基礎研究はドイツとイギリスにまかせ、実用的なサービスに重心を置くことを決めたことが原因であるようだ。
彼らはそれでもなお自分たちの国は中国よりはマシであるという。先月まで滞在していた中国人研究者は研究所で高額な実験用機器を研究予算で購入する際にそれを認めてもらうために自費で上司を接待しなければならないと言っていたそうである。中国の公務員の間では汚職が蔓延しているという一般論を読んだり聞いたりすることは多いが、具体例を聞いたのはこれが初めてであった。中国の話題が出てからは中国が最近ものすごい勢いでアフリカなどの貧しい国々を金の力で植民地化しているという話題を皮切りに、中国という国がいかに酷いところかという話題で大いに盛り上がった。
また、先日ニューヨークで妻の友人に、中国は食品に有害物質が含まれていたり栄養状態が悪いためそれらが蓄積して若いのに病気になる人が多いという話を聞いたが本当だと思うかと聞いてみたところ、するとそんなことは常識であると言っていた。
まるで女性同士の集まりでその場にいない女性の悪口を言うことが無難な話題であるかのように、誰と話しても中国の悪口は無難な(かつ熱くなれる)話題のようである。