今回見たDVDは黒人家族と白人家族を特殊メイクにより逆の人種に入れ替えてそれぞれの人生を体験させるドキュメンタリーである。メイクだけで白人を黒人に、黒人を白人に入れ替えることができるか不思議に思うかもしれないが、実は思ったほど不自然ではない。白人から黒人への変装は家族3人とも完璧である。特筆すべきは娘で、白人の状態ではCUの女子学生のように「白ブタ系」なのだが、黒人に変装すると驚くほど美人に変化する。白人のお母さんもMinnie Ripertonのようだ。黒人から白人への変装は多少不自然なところもあるが、それでも「こんな人もいるよね」と思えるレベルである。黒人/白人の入れ替えは私は1985年に流行したGrace Jonesの"Slave to the rhythm"というビデオで初めて目にしたが、そのビデオも意外に自然で驚いた。
メイクにより異人種に入れ替わること、特に白人が黒人に入れ替わることはタブーとされており、バレた場合は深刻な問題に発展するケースがあるという。日本で言えば朝鮮半島系の人が日本人の苗字を使用することによって出自を隠し、それが後で発覚する場合、大変面倒なことになる。逆のケース、日本人が朝鮮半島系の苗字を名乗り在日韓国・朝鮮系の人になりすます、ということをやった勇気がある人が存在するかどうか不明だがより大変な事態を招くことは明らかであろう。命がけのドキュメンタリーなのである。
変装することによって黒人は普段白人から表立っては聞くことが無い差別意識を目の当たりにする。一方、白人の方は白人の方で普段使えない黒人言葉(N-words)を使って大はしゃぎし、本物の黒人から大顰蹙を買う。このドキュメンタリーから得られる教訓としては差別が事実として存在している国において、自分には差別意識がないと思っている人やその事実について無知な人ほど始末が悪いということ。このドキュメンタリーの中では圧倒的に白人のお母さんがそれにあたる。その次に問題があるのが白人のお父さん。唯一の救いは白人少女である。この白人少女が黒人に変装し、黒人の間で盛んな"Slam Poem"(音楽が無いラップみたいなもの)の教室において、黒人の少年少女の作る詩のレベルの高さに衝撃を受け、自らもその技術を高めていく過程に白人に変装した黒人のお父さん、お母さん、子供の3人ともが感銘を受ける。
アメリカでは黒人の大統領が誕生し、人種差別はすでに過去のものと考えることはとんだ早合点であることがこのドキュメンタリーを見るとはっきり分かる。そもそも、「黒人初の大統領」のような言葉が出ること自体が差別が根強く存在することを示している。もし人種差別が本当に存在しなければ"It don't matter if you're black or white"のはずだから。残念ながら、米国において黒人と白人がピアノの黒鍵と白鍵のように調和して暮らせるのは何世代も先のことであろう。